広報よこはま2ページ
OPEN YOKOHAMA
2023(令和5)年9月号 
No.895


〇スペシャル対談2

一男二女の父親であり、料理研究家として活躍されているコウケンテツさんと中学校給食や子育てしやすいまちづくりについて意見を交わしました。

■横浜は家族で訪れたいまち

―大阪出身のコウさんは現在関東を拠点に活動されています。横浜にいらっしゃることはありますか?

コウさん:僕は都内在住なのですが、横浜はアクセスも良くて家族でよく遊びに来るんです。うちの家族はよこはま動物園ズーラシアが大好きで、年間パスも持っていますよ!
山中市長:それは嬉しいです!
コウさん:実は妻にプロポーズしたのも横浜のレストランだったので、思い出深い場所なんです。
山中市長:素敵なお話ですね。横浜はウォーターフロントが綺麗で、異国情緒や自然の豊かさなどの要素がベストミックスされているのが魅力です。

■2026年から全員給食スタート

―先ほどコウさんに横浜市の中学校給食を試食していただきました。率直なご感想をお願いします。

コウさん:まず給食の彩りや盛りつけが洗練されているのが印象的でした。見た目の良さは大事です。何より栄養バランスも素晴らしいです。
山中市長:私はお昼に毎日給食を食べているのですが、今日のメニューは何だろうといつも楽しみなんです。横浜市の中学校には以前まで給食がなかったので全員お弁当でしたが、2026年から全員給食を実施します。現在は段階的に給食も選べるように取り組みを進めており、今では40%弱の生徒さんたちが給食を選択しています。
コウさん:増えているんですね。
山中市長:一度食べてみると、「給食って美味しいね」という声が、生徒さんからも保護者の方からも多く聞かれます。横浜には美味しい野菜や肉など豊かな地元産の食材がありますから、給食が地産地消を学ぶきっかけにもなればと思っています。また、季節や行事にちなんだメニューや、アフリカ料理など国際色豊かなメニューもあるんですよ。
コウさん:地元食材の素晴らしさや季節の行事、またグローバルな物の考え方などを食から学べるというのはとても良いことですね。

■バリエーション豊かな献立

―お手元に給食の献立表がありますが、ご覧になっていかがですか?

コウさん:まず給食にこれだけのバリエーション豊かなメニューがあることが驚きです。
山中市長:味はいかがでしたか?
コウさん:美味しかった!
山中市長:よかったです!そう言っていただいて嬉しいです。
コウさん:大事なのは塩分量なんです。これが美味しさに直結するので、塩分が高い方が人間は旨味を感じやすい。しかし給食には当然厳しい基準が設けられていて、その中で美味しく見た目も良く、子どもたちにしっかり食べてもらえる内容にしないといけません。
山中市長:調味料を色々と足せば、味が濃くなって美味しく感じられそうですが、栄養バランスを考えるとそういうわけにもいきませんよね。
コウさん:そこが一番難しいところです。非常に試行錯誤しながらメニューを開発されていることが想像できました。

■子育て中の方に時間とゆとりを

―コウさんはご著書の中で、「食育は行政にある程度任せてもいいのではないか」と書かれていましたね。

コウさん:そうなんです。食育を全部家庭で行うのは、忙しい保護者にとって時間的にも精神的にも大変だと思います。横浜市のように行政が一生懸命取り組んでくれているのなら、本当にお任せしてしまってもいいのではないかなと。
山中市長:横浜市としては良い給食を作ることに力を入れていますので、保護者の方にそう思っていただけたら嬉しいです。また、同時に保護者の方の時間を増やすことも大切です。子育て中、特に朝は、とにかく時間的な余裕がないですから、朝食だけでなくお弁当まで家庭で手作りするのは大変だと思います。そういった観点からも、給食の存在は重要だと思います。
コウさん:僕も中学生の息子のために毎朝5時に起きてお弁当を作りますが、前の晩から心の準備が必要なくらい大変なんです。お弁当のメニューを考えて、買い物へ行き、冷蔵庫に収納するという手間が省ける分、他のことに時間とエネルギーを使えるようになり、時間のゆとりも心のゆとりも生まれます。

■みんなで食べるから美味しい!

―みんなで机を突き合わせて一緒に楽しく食べるというのも、給食の醍醐味ですよね。

コウさん:お子さんたちは給食の話題で盛り上がるでしょうね。「明日はどんなメニューだろう?」と友達同士で話したり、「今日こんな給食を食べたよ!」と家族に話したり。給食は、子どもたちに向けて色々な意味での栄養を与えてくれていますよね。
山中市長:ワイワイみんなで楽しく食べる時間が、おそらく好き嫌いをなくす一番の方法ですよね。
コウさん:そのとおりだと思います。栄養面は専門家の方にお任せして、何よりも大事なのは今日楽しかったなっていう気持ちです。これこそが最高の食育なのではないでしょうか。

■中学生が給食メニューを考案

―横浜市では2020年から、生徒が考案する「中学校給食メニューコンクール」を開催しています。

山中市長:昨年は市立中学校から4,121人の生徒さんが参加してくださいました。優秀賞を受賞したら、実際に給食のメニューになることもあるんです。
コウさん:そうなんですか!
山中市長:たとえば運動をしている生徒さんが、たんぱく質をたっぷり取り入れることができるメニューを考えたり、勉強がはかどるようにDHAが豊富な青魚を食べられるメニューを考えたりと、生徒さんたちのアイデアには感心させられますね。
コウさん:私も5歳の娘と一緒に料理をするとき、大人にはない発想が飛び出してくるのでビックリします。しかも自分のアイデアが給食に採用されるかもしれないとなれば、やりがいにもつながりますよね。